この記事でわかること
- 特性のあるお子さんにも、礼儀や社会のルールを伝えることは大切だという考え方
- 「配慮」と「甘やかし」の違い、そしてバランスの取り方のヒント
- 周囲の子どもへの気づかいの限界と、大人が担うべき役割について

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特性があるから、何も言わなくていい──ではないと思う
「この子には特性があるから、怒らないようにしなきゃ」 「癇癪が出たら周りが合わせてあげるしかない」
そんな空気の中で、ちょっとモヤモヤしている保護者の方はいませんか。
これはとても多くの方が感じている、でもなかなか口に出しにくいことだと思います。
特性のあるお子さんをお持ちの保護者の方、あるいはそういったお子さんと一緒に過ごす環境にいる方から、こんな声を耳にすることがあります。
「特性があることはわかってる。でも、挨拶とか、ありがとうとか、人として必要なことは教えてあげたい。」 「癇癪があっても、やっていいことといけないことはあるんじゃないかと思うのだけれど……。」 「周りの子がずっと気を遣い続けるのは、それはそれで違うんじゃないかと感じることがある。」
このモヤモヤ、まったく変なことではありません。むしろ、お子さんのことを本気で考えているからこそ出てくる、大切な問いだと思います。
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「配慮」と「甘やかし」は、似て非なるもの
特性のあるお子さんへの配慮と、いわゆる「甘やかし」は、しばしば混同されがちです。
配慮とは、そのお子さんが他の人と同じように安心して過ごせるよう、環境や伝え方を工夫することです。たとえば、急な予定変更を事前に教えてあげる、口頭だけでなく視覚的に情報を伝える、大きな音や刺激を減らすといったことがそれにあたります。
自閉スペクトラム症(ASD)の特性のあるお子さんは、臨機応変に対応したり場の空気を読んだりすることが苦手なことが多い一方で、具体的に示されて納得できたルールや決まりごとを守ることが得意なお子さんもいます。ただし、特性の表れ方はお子さんによって本当にさまざまで、一概には言えません。
つまり大切なのは、「ルールを教えない」のではなく、「ルールをそのお子さんにわかる形で伝える」ということです。
「何をしなければならないのか・してはいけないのか」とその理由を具体的に伝えながら、お子さんの理解に合わせてゆっくり関わっていくことが、特性のあるお子さんへのひとつの適切なアプローチです。
「特性があるから怒ってはいけない」「崩れないように全員が配慮すべき」という考え方が続いてしまうと、そのお子さん自身が「自分は特別扱いされるべき存在」という認識を持つようになることもあります。それは、長い目で見たときにそのお子さんにとっても、周りの子たちにとっても、あまりいい方向には向かいません。

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癇癪は「わがまま」ではない。でも、正しいことは正しいと伝えられる
特性のあるお子さんが癇癪を起こすとき、それはわがままや反抗ではないことが多いです。
特性のあるお子さんの中には、先の見通しをもつことが難しかったり、感情を言葉にして伝えることが苦手だったりするお子さんがいます。予定が突然変わると強い不安や混乱が生じたり、気持ちを表現できないもどかしさが怒りや泣き叫びという行動に出やすいことがあります。癇癪は「わがまま」ではなく、「言葉にできない苦しさのサイン」として受け取ることが大切です。
だからこそ、癇癪が起きたときの対応は慎重に、落ち着いてからが基本です。
ただ、それは「何も伝えない」ということとは違います。落ち着いたあとに、「さっきのあの言い方は相手が悲しくなるよ」「ありがとうって言えると、相手はうれしいんだよ」と、穏やかに、具体的に伝えることは、お子さんの社会性を育てる上でとても大切なことです。
「〇〇しない」という禁止形ではなく、「代わりにどうすればいいか」を具体的に示すことが、伝わりやすい声かけのポイントです。
また、関わる大人によって対応がばらつくと、お子さんが混乱することがあります。できるだけ関わる大人どうしで伝え方や対応を共有し、一貫性をもって接することが助けになります。
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集団に入る前に、まず「対話」から──現場で感じていること
リンカーンの現場で関わってきた中で感じていることがあります。
保護者の方から「集団の中に入りたいのだけれど、周りの言動がすべて気になってしまう。だから周りに配慮してほしい」という言葉をいただくことがあります。お子さんの気持ちを代弁してくれているのだと思いますし、その切実さは十分に受け取っています。
ただ、そのときにまず大切にしているのは、集団に合わせてもらう前に、まずスタッフとお子さんが一対一でゆっくり対話すること。「ここはどんな場所か」「どんなことが起きるか」「困ったときはどうすればいいか」を、そのお子さんにわかる言葉で丁寧に伝えていく。その安心感が積み重なってから、少しずつ集団の場に慣れていく。そういう順番を大切にしています。
「集団への参加」をゴールにするのではなく、まずその子が安心できる関係をつくること。それがリンカーンでの関わりの出発点です。
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「周りの子も全員気を遣って」は、誰のためにもならない
特性のあるお子さんがいる集団の中で、「崩れないように周りが全員配慮して」という状況が長く続くと、それは周りの子どもたちにとっても、決して楽ではありません。
合理的配慮という考え方があります。これは障害者差別解消法などに基づく考え方で、障害のある方が他の人と同じように社会参加できるように、その特徴に応じた支援や調整を行うことを指します。そして「合理的」というのは、支援する側に過度な負担をかけずに、可能な範囲で困難を解消することを意味しています。
「必要な配慮はする、でも特別扱いはしない」という線引きを大切にしている現場もあります。どこまでが必要な配慮で、どこからが特別扱いなのかを丁寧に考えることが、特性のあるお子さんにとっても、周りの子にとっても、よりよい環境をつくることにつながります。
「あの子だけ怒られない」「なんで気を遣わないといけないの」という気持ちが周りの子の中に積み重なっていくと、それはその子自身の孤立にもつながりかねません。特性のあるお子さんが社会の中で安心して過ごしていくために、礼儀や感謝の気持ちを伝えること、してはいけないことを知ること。これらは長い目で見て、そのお子さんを守ることにもなります。

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まとめ
特性のあるお子さんへの配慮は大切です。でも、配慮と「何も伝えない」は、まったく別のことです。
癇癪が起きるメカニズムを理解しながらも、落ち着いたタイミングで「正しいことは正しい」と穏やかに伝えていくこと。礼儀や感謝の気持ちを、そのお子さんにわかる形で根気よく伝えていくこと。それは決して「厳しくすること」ではなく、そのお子さんの先を一緒に考えることだと思います。
そして、周りの子どもたちが過度に気を遣い続けることのない、みんなが安心できる環境を、大人が一緒につくっていくことが大切です。
リンカーンでは、特性のあるお子さんも、そうでないお子さんも、それぞれのペースで安心して過ごせる場所を目指しています。スタッフが一人ひとりの様子をしっかり見ながら、お子さんに合った伝え方や関わり方を一緒に考えます。
「うちの子への関わり方、これでいいのかな」と迷っている保護者の方がいらっしゃれば、まずはお気持ちをお聞かせください。江戸川区瑞江・江東区亀戸の2校舎で、いつでもお待ちしています。